セラミックを使った審美治療は、「形成」「印象」「製作」「装着」といった複数の工程に分かれており、そのいずれにおいても歯科医師および歯科技工士の高い技術が求められます。仕上がりの美しさや歯の寿命のためには、どの工程もおろそかにできません。
今回はその中でも、治療の土台となる最初の工程「形成」について、当院がどのような考え方と技術で取り組んでいるかをお伝えします。
形成(けいせい):セラミックの被せ物に向けて歯を整える工程
形成(けいせい)とは、セラミックなどの被せ物を装着する際に、土台となる歯を適切な形状に削り整える工程です。
一見すると単純な「削る」作業に見えますが、実際には一本一本の歯の状態を見極めながら、0.1ミリ単位の精度で設計していく高度な判断が求められます。
「歯を削る量を最小限に」と「被せ物の強度確保」——相反する要求のバランス
もちろん、患者さんご自身の歯はなるべく削りたくありません。一度削った歯の組織は元に戻らないからです。
一方で、セラミックの被せ物には十分な強度が必要で、強度を確保するには一定の厚みが欠かせません。とくに被せ物を長持ちさせるためには、咬んだ時に対する歯と接触する場所にはしっかりとした厚みを持たせる必要があります。しかし、厚みを出すためのスペースを確保しようとすると、その分だけ元の歯を多く削らなければなりません。
「歯を削る量は最小限に」「被せ物の強度と耐久性は最大限に」——この二つの要求は、本来相反するものです。 形成とは、この相反する条件を、症例ごとに最適なバランス点で両立させる工程だといえます。
元の歯を大きく削ってよいのであれば、正直なところ難易度は大きく下がります。しかし「もし自分自身が治療を受ける立場であれば、できる限り歯を削りたくない」、その気持ちを基準に、当院では一本一本の形成に向き合っています。
細い糸を歯の根元に巻く「歯肉圧排」—削るラインをミリ単位で見極める技術
当院では、歯を削る前に歯の根元(歯と歯ぐきの境目)へ細い糸を1本ずつ丁寧に巻き込んでいきます。
この処置は「歯肉圧排(しにくあっぱい)」と呼ばれ、歯ぐきをわずかに押し下げることで、普段は歯ぐきに隠れているマージンライン(被せ物と歯の境目になる部分)をはっきりと露出させるためのものです。
このラインが明確に見えるかどうかで、削るべき量と位置の精度は大きく変わります。0.1ミリの精度で形成をコントロールするためには、この下準備が欠かせません。
さらに、糸を巻いた状態で形成を進めることで、最終的に被せ物が入ったときの歯ぐきのライン・隣の歯とのつながり・咬み合わせまでを、削っている最中から見据えて設計できます。形成の段階で「完成形」がイメージできているかどうかが、仕上がりの自然さを大きく左右するのです。
一本の歯に「三段階の削り面」—被せ物のフィット精度を決める形成技術
さらに形成の工程では、一本の歯に対して三段階の削り面をつくっていきます。具体的には、歯の根元に近い部分・中央部・先端部の三つの面を、それぞれ異なる角度で慎重に整えていく技術です。
歯は一様な円柱ではなく、根元から先端にかけて微妙にカーブを描いています。そのため、一つの角度でまっすぐ削ってしまうと、歯科技工士さんが天然歯と同じ様な色調をセラミックに表現する事が難しくなり、また歯の神経を侵襲して不要なダメージを与えてしまいます。
歯の自然な形に沿って三面に分けて形成することで、被せ物は歯に吸い付くようにぴたりと適合し、長期的な安定につながるのです。
正直に申し上げると、ここまでの工程は、省略しようと思えば省略できます。歯肉圧排も、三段階の削り面も、行わずに被せ物を入れることは技術的には可能です。
それでも当院がこの手間を惜しまないのは、「自分や大切な家族が治療を受けるなら、どこまでの技術で治療してもらいたいか」。その基準を、診療のすべての判断基準に置いているからです。 その信念だけが、ここまでの工程の理由です。
形成後と治療後の模型


セラミック治療の費用は、「素材」ではなく「技術」への対価です
セラミック治療は自費診療です。率直に申し上げて、保険治療と比べると決して安い金額ではありません。
しかし、その費用の大部分は、実はセラミックという素材そのものの価格ではありません。
ここまでお読みいただいた方にはお分かりいただけるかと思いますが、歯肉圧排による精密なマージン設定、三段階の削り面による緻密な形成、こうした一つひとつの手技を、ミリ単位以下の精度で積み重ねていくための技術に対する対価が、その大部分を占めています。
精密な治療を安定して提供するための日々の研鑽、数多くの症例を通じて培ってきた経験、一本一本の歯に対する判断、そして手先の技術。これらすべてに対する費用として、自費治療の料金を頂戴しております。
決して安くはない治療だからこそ、「グリーン歯科で治療してよかった」、そう感じていただける一本を、一つひとつ丁寧に仕上げてまいります。


